86

7/4(土)、実母86歳が永眠しました。

昨年の10月に急性胃腸炎で入院した実母。病院で我に返ったとたん家へ帰ると言い出して、勝手に帰ってきてしまいました。

(~ヘ~;)

幸いにして、その後元気になったのですが、その時の検査で肺に影が写っていたそうです。

癌です。

本人は、もう十分に生きたから手術は受けず、苦しまずに死ねれば良いと言っていました。さらに『痛いのは嫌だよ』とも。私たちも本人の自由にさせようということで、一旦は承諾して追加の検査を受けることにしました。

しかし、いろいろな検査を受けはじめると、他の臓器への転移はなく、いたって健康であることがわかりました。すると、初めは本人の意思を尊重していた私たちも『これって手術で取り除いた方がよいのでは?』となり、次第に本人の説得へ移りました。

その後の検査を重ねれば重ねるほど、摘出が良さそうに思えてきます。2人の弟たちの働きもあり、昨年末のクリスマスに手術を受けるところまで、何とかこぎつけました。

ところがです。

前日のクリスマス・イブに入院したときのこと。術前説明のときに、実母が突然『先生、この辺りが痛いのですが』と左胸の辺りをさすりだしたそうです。すると、主治医の先生が『え?心臓が悪いのですか?それでは今回の手術に耐えられないかも知れません。心臓に問題がないことをすぐに調べてください』と言われ、あっさりと退院してしまいました。

2日後に心臓外科のある病院を訪ね、1月の2週目にカテーテル検査を受けることになりました。当日、同席してくれた実弟からLINEがあり、問題なく手術が受けられる状態だということです。どうやら胸が痛いのは、スジか筋肉ではないかと。

(~ヘ~;)

1月中旬に手術を受けました。術後数日たってから妻と2人でお見舞いに行くと、思った以上に元気で安心しました。

それからしばらくして、コロナ騒ぎが始まった頃でした。実父からメールがありました。『転移が見つかった』と。

日に日にコロナ感染者数が増え、やがて緊急事態宣言が出ました。

実父とのメールのやり取りでは、今すぐ悪くなる兆候がないとのことで、コロナがおさまるのを、ただただ待つことにしました。だって、心配だからといって押しかけて、気がつかないうちにコロナ・ウイルスを持って行ってはいけないと思ったからです。

5月末に、近所に住む実弟からLINEがありました。医者からは『個人差はありますが、普通の生活が出来るのは、あと1月ぐらいです』。6月1日付で異動があり、示達を受けに会社へ出勤した私は、会いに行くのを2週間先まで待つことにしました。

6月中旬になって訪ねたとき、自宅にいた実母はまだ動ける状態でした。会話も普段通りです。ただ、左腕が持ち上がらなくなってしまったこと、左脚が言うこと聞かなくなったことを私に伝えながら、『はァ〜』とため息をついていました。『仕方がないよね』と、小声で自分自身に言い聞かせているようでした。

翌週、あまり顔を見せていない次女を連れて、妻と三人で病院へお見舞いに行きました。数日前に緊急入院していたからです。コロナ感染者が再び増加し始めた頃でもあり、面会は2人までで時間も15分以内でした。妻は、私と次女の2人で行ってきてと言って車に戻ります。

ナースステーションで実母の名前を言うと、すでにベットから出ることができない状態でした。対応してくれた看護師さんが気を遣ってくれて、『せっかく来たんだから、会いたいですよね』と言い、10分間という約束で病室に入れてくれました。

ベットの上の実母はうずくまり、痛みに耐えているところでした。しばらくしてこちらに顔を向けたときに初めて話しかけます。『誰だかわかる?』と。すると実母は『はい、わかります』と妙に丁寧な言葉で答えます。次女をみてもピンと来ないようでした。

別の看護師さんが現れ『他の患者さんもいるので、5分でお願いします』とのこと。実母に顔を向けると、私たちに向かって両手を合わせ、しきり頭を下げていました。自分のせいで私たちが怒られていると思ったのでしょう。

病院の中でコロナが蔓延しないようにすることが大切であることは、私たちも十分に理解しています。なにせ、これが今なのですから。

それでも・・・

いたたまれなくなった私は『これで帰るね。また来るね』と言ってすぐに病室をでました。駐車場までの廊下を歩いているときに、私は次女に聞きました。『おばあちゃん、かなり痩せただろう(まるで別人のように)?』。すると次女が答えました。

『うん、確かに。でも・・・、おばあちゃんだったよ』

それから1週間がたった7/4の朝、実母は息を引き取りました。前日まで痛みと戦っていたようですが、最後はやすらかだったそうです。

私は少し安心しました。

だって

実父や弟たちには申し訳ないのですが、あれだけ痛いのは嫌と言っていた実母が、やっと痛みから解放されたのですから。

後で聞いた話ですが、転移が見つかる数日前。左肩の激痛に襲われた実母は、実父に聞いたそうです。

『何でこんなに痛いのだろ。手術までしたのに』と。

 

『ばあちゃん、今まで私や私たち家族のためにありがとうございました。』

『それから、もう、痛いのはないからね。』

 

はやく、はやく、コロナにふりまわされない世の中になって欲しいです。

おしまい